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謹賀新年 音楽を「きく」ということ [ご挨拶・ご案内]


謹賀新年

旧年中出会うことのできた音楽家、芸術家や裏方さん。そして数々の素晴らしいコンサートやCD、
その全てが僕にとって「学び」でした。また、拙ブログをお読み頂いている皆さま、コメントや
nice!をつけてくださっている皆様、ありがとうございます。心から感謝を申し上げます。
音楽の本質に迫り、「クラシック」音楽の継承と創造に、微力ながらお役に立てれば、と感じて
おりますので、本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

平成22年元旦

♪♪♪

Classical Music cafeへようこそ!

今日は元旦。初詣後、恵比寿に住む叔父叔母の家に年始の挨拶から帰って、早くも夕方。
お正月恒例のヴィーン・フィルのニューイヤーコンサートを聴き終え、書いています。指揮者は、
登場2度目のフランス人ジョルジュ・プレートルさん。かくしゃくとしていて、良い感じでした。

僕の同僚のHさんが、プレートルさんを招聘した事務所で仕事をしていたことがあって、いつも、
「マエストロはね~すごいんですよ」と懐かしい顔で話しをしてくれます。伝え聞くエピソード
だけですら巨匠の風格を感じました。今日の「指揮」も、感じたままに、音楽をされていますね。

元旦は、「音楽をきく」ということについて、少しだけ書いてみます。

イタリア・クレモナに在住するヴァイオリン製作者の松下敏幸さんについて、昨年少しだけ紹介
したことがありますが、僕は、松下さんの発する感覚的な言葉…手作業と修練を通して研ぎ澄ま
された内容を持つ言葉で、衝撃と驚きを持って耳にしたのだけれど…こんなことを言ったのです。

「音楽は聴いちゃだめですよ」

「何を言っているんだ?」と感じる人もおられるかもしれません。

僕は、即秒ですぐわかった理解した…気がしたけれど、きっと、
多くの示唆を含むのは、間違い
ないと直感しました。「音楽芸術」にとって不可欠な要素である「楽器」の、大変優秀な製作者
の感覚と信念、そして人生に基づいた言葉ですから。

その後、僕が思ったのは、ああ、だから評論家の吉田秀和さんは、
「聞く」とも「聴く」とも書
かずに、音楽を、平仮名で「きく」と書くのだな…と。つまり、

「効く」「利く」「訊く」と「聞く」「聴く」も全部ひっくるめて、音楽を「きく」と書かれて
いるのかな?と。吉田さんは、音楽の表面的現象を論じるのでなくて、人生において、音楽を、
どう受け入れているか?を論じている…と僕は感じますが、吉田さんは、いつ頃から「聴く」と
書かずに「きく」と書いたのかを調べたのが、元旦の「事始め」でした。

『主題と変奏』

吉田さんが最初に書かれた本です。その中に収まる今年生誕200年の『ローベルト・シューマン』
は、
『近代文学』から先に発表されたもので、ときは昭和25年。今から60年前の1950年のこと。
吉田さんは37歳くらいで、もう既に「きく」と書いてしまっている。

「聞く」
でも「聴く」でもない。驚いたことに「見る」でもなく「観る」でもなく「みる」と。
「すき」とも書いてあった。なんという感覚だろう!これが、僕の今年の「初驚き」でした。

もしかしたら、平仮名で書く「流行」のようなものが、当時あったのかもしれないけれど、漢字、
平仮名のどちらを選ぶかは、執筆する人の「信条」「感覚」に任されるはずです。

それと、『主題と変奏』の解題を読んで思わず、ふきだしてしまった。

「それは、旅行へ行って旅行先のお寺かなんかの壁か柱に落書きしたら、その落書きを何十年か
たって、若い中学生や高校生が読んで、『こいつあいつじゃないか?あいつの落書き読んだぞ』
っていわれる…」(引用ここまで)

若いときに書いた『主題と変奏』を「落書き」にたとえて…ね。これには、大笑いした。

僕は、今年は、せめて「音楽をきこう」と感じます。

「聴」いていると…ね。音量のバランスとか、音色とか、ああ音程とか、リズムとか…そこから
「音楽」に入り「音楽」という部分で留まってしまうような気が、僕はするのです。
優れた演奏
や音楽は、音楽を創造した人、音楽を再現する弾き手の人生そのものが、投影されています。

そう、人生は、人それぞれですから…ね。
人生そのものに「優劣」をつけることは、なかなかできないと、僕は感じます。

ところで、
今年は、シューマンとともにショパンも生誕200年ですね。ここでショパンの作品を、
ひとつだけ紹介しましょう。変ホ長調の「ワルツ」(KK.IVa-14)。

演奏するのはアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(1920~1995)。

ミケランジェリは、1949年のショパン没後100年記念祭オフィシャル・ピアニストでした。
若い頃は、ドビュッシー弾きというよりも、むしろ、ショパン弾きという認識が、世間にはあっ
たようです。
この録音は、1955年、ショパン・コンクールの審査員として招かれたときに、コン
クールの合間をぬって、ワルシャワで開催された演奏会の実況録音です。

実は、ミケランジェリにとって、重い肺病やらで、しばらく演奏できないでいた年が1955年でも
あるのです。ある意味、再起を賭けた久しぶりの公開演奏です。演奏できることへの喜びが感じ
られる輝いた演奏。聴き手が圧倒されたときに起きる暖かさと驚嘆が交じった拍手…。

音楽の創り手、弾き手、聴き手が見事に溶け合った瞬間の記録です。

僕は「音楽をきいて」いきたいです。できれば皆さんとご一緒に。

今年もよろしくお願い申し上げます。


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コメント 23

kaoru

明けましておめでとうございます。
昨年はお世話になり有難うございました。
ご健康に恵まれ素晴らしい一年を
過ごされますようお祈り申し上げます。
今年も素敵な音楽を色々と拝聴させて頂き
記事も拝見させて頂けるのを
楽しみにしています。
本年も宜しくお願い致します。
by kaoru (2010-01-02 08:11) 

mamebito

音楽を「きく」…示唆に富む考察に新年から学ばせていただいた想いです。
未だ音楽市場でメジャーは得ていないが素晴らしいアーティストから私も知るような大御所まで、いつも内容の濃いヒデキヨさんのエントリを楽しみに拝見しています。また私のblogへコメントもいただきたいへんありがとうございました。
“演奏していない側”もあっての音楽ですよね。私もそちらの側から「音楽をきいて」いければと。本年もよろしくお願いいたします。
by mamebito (2010-01-02 12:01) 

しるくら

新年おめでとうございます
ヒデキヨさんの記事を読んで考え込んでしまうことが多く、なかなかコメントを入れるところまで辿り着けませんが、いつも興味深く読ませて頂いています。
今回の「きく・みる」のお話も面白いですね。
感覚で捉えたことを文字にして残したり、言葉で表現して人に伝えるのは、私はとても難しいと考えています。
>「音楽は聴いちゃだめですよ」
知的に捉えるのではなく、「音楽を感じなさい」と言っているようにきこえました。
音楽をさらに多角的に楽しみたいですね。

ことしもどうぞよろしくお願い致します。
by しるくら (2010-01-02 13:14) 

江州石亭

ヒデキヨさん、新年明けましておめでとうございます。
昨年12月はじっくりログ読ませてはいただいていたのですが、コメントを書く間もなく無沙汰しておりました。
なにぶん仕事の合間に趣味的にいろいろなことをしておりますので機動が利きません。
そう「きく」についてはとても考えさせられました。
私も耳が実にいい加減なものですから、感じとるということについては大いに賛同です^^
今年も充実したヒデキヨさんの世界を拝読させていただくことを楽しみにしております!
by 江州石亭 (2010-01-02 15:51) 

音楽っ子

ヒデキヨさん、あけましておめでとうございます。
「聞く」と「聴く」、「見る」と「観る」については、私も以前から考えた事がありましたが、「きく」という考え方ですか~。私も音楽を感覚的に捉えたいと思います。「きく」、そんな気持ちで音楽を聴きたいです。(このあとは、「きく」という気持ちを込めて「聴く」と書きますね。)

ウィーンフィルのニューイヤーコンサート、後半だけでしたが聴きました。楽しくて最高な気分になりました!そして指揮者のプレートルさん、年齢を感じさせない指揮ぶり(とにかく明るい!元気!)でよかったですね♪
そして、ミケランジェリさんの演奏。なんだか感動しました!演奏する喜びに溢れた演奏。観客の喜びを分かち合うような拍手。ショパンの音楽もですが、美しいピアノの音と端正な音楽。(聴いている時、この方の事を想像しておりました。)1955年の再帰をかけた貴重な演奏がこうやって今聴けることにも感謝します!

お正月から楽しくなりましたよ~♪
今年もどうぞ宜しくお願い致します!

by 音楽っ子 (2010-01-03 00:14) 

ヒデキヨ

kaoruさん 明けましておめでとうございます
こちらこそ 旧年中は有難うございました
お幸せに平安にお過ごしになられるよう お祈り申し上げます
本年も どうぞ よろしくお願い致します

桃さんにも よろしくお伝えくださいませ
by ヒデキヨ (2010-01-03 19:54) 

ヒデキヨ

mamebitoさん

明けましておめでとうございます
こちらこそ 旧年中は有難うございました

mamebitoさんが書かれる バランスの素晴らしい記事に
いつも敬意を払っておりました また 大いに参考になりました
本年も どうぞご健筆をお願い申し上げます
by ヒデキヨ (2010-01-03 19:59) 

ヒデキヨ

しるくらさん 明けましておめでとうございます

>知的に捉えるのではなく、「音楽を感じなさい」と言っているようにきこえました。

なるほど! そういう面もありますよね!

僕は とっても真面目で真摯なしるくらさんを尊敬してしまいます
そして 似ている部分があると感じます 僕と…少しだけでも…
もっとも しるくらさんの方が ずっと研究熱心ですが…

今年も1年楽しんで参りましょう よろしくお願い致します!
by ヒデキヨ (2010-01-03 20:08) 

ヒデキヨ

江州石亭さん 新年明けましておめでとうございます

旧年中は本当に有難うございました!

>なにぶん仕事の合間に趣味的にいろいろなことをしておりますので機動が利きません

もう 何をおっしゃるのか…
毎日更新される江州石亭さんは 本当にすごいです
そして どの記事も何というか 光輝いて見えます

鋭いご意見ご感想に いつも勉強させて頂いておりますので 
今年もどうぞ よろしくお願い申し上げます!
by ヒデキヨ (2010-01-03 20:13) 

ヒデキヨ

音楽っ子さん 明けまして おめでとうございます!

旧年中は いつもたくさんのコメントを有難うございます
音楽っ子さんの熱心なコメントを読むのが とても嬉しいです
返コメントがなかなかできておりませんが…汗

今年も また お感じになったことを お聞かせくださいね
よろしくお願い致します!
by ヒデキヨ (2010-01-03 20:18) 

yablinsky

私のブログのご訪問ありがとうございました。先月の小林愛実さんのリサイタルでは空間を共にしていたようですね。今後ともよろしくお願いします。
by yablinsky (2010-01-04 00:17) 

ピカ

きく・みる・すき…


美術館に行くと、解説があるほうがいいなと思うのですが
川端康成先生は、(美術)よく分からないけれど
感じることが出来ればそれでいいと思う、との趣旨の
ご発言をされています。

その最初に素直に思う気持ちが大切なのですね^^
by ピカ (2010-01-04 14:36) 

まゆ

あけましておめでとうございます。

ひできよさん、私はいつも音楽に励まされて生きています。
そのジャンルは様々です。ジャニーズのアイドルのヒット曲にも元気をもらったりしちゃいます。
はい。もちろん村松王子のピアノにも癒やされっぱなしです。
だから今日のブログの音楽をきくって意味わたしにも少し理解できた様に思います。

こんなド素人の私ですが本年も学びにこさせてもらいます。
よろしくお願い致します。
by まゆ (2010-01-05 09:02) 

ciscokid

遅くなりましたが、明けましておめでとう御座います。
今年もよろしくお願いします。
今日(4日)日本から帰ってきました。丁度一か月の滞在でした。
by ciscokid (2010-01-05 10:59) 

ひとみ

あけましておめでとうございます!

スーザン・ボイルさんをYou tubeで初めて見たとき。

歌が始まったとたん、頭の中では「何だ、大したこと
ないじゃん・・・」という言葉がよぎったのに、同時に
涙がぼろぼろ・・・。とても不思議でした。

私の中で、「きく」が「聴く」を凌駕した瞬間だったの
ですね(笑)

今年もよろしくお願いいたします。

by ひとみ (2010-01-05 23:24) 

ヒデキヨ

yablinskyさん 

有難うございます
こちらこそよろしくお願いします
by ヒデキヨ (2010-01-06 08:57) 

ヒデキヨ

いつものピカさん らしくない? コメントと感じました…が
でも とても良い内容ですね 素晴らしい ブラヴォー印を進呈!  
by ヒデキヨ (2010-01-06 09:00) 

ヒデキヨ

まゆさん

あけましておめでとうございます
僕は まゆさんの突っ込みがとってもすきですよ
いつも本音ですね 京都弁がさらに迫りますね

>そのジャンルは様々です。ジャニーズのアイドルのヒット曲にも元気をもらったりしちゃいます。

ジャニーズは
現在の日本を代表するエンタテインメント且つアーティスト集団です
あの輝きやパワー そして厳しい修練は素晴らしいですね
by ヒデキヨ (2010-01-06 09:06) 

ヒデキヨ

ciscokidさん

あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします

一か月の日本はいかがでしたか?
また ブログに遊びに行きます
by ヒデキヨ (2010-01-06 09:07) 

ヒデキヨ

ひとみさん

あけましておめでとうございます!
あの人は ご自分の人生(≒魂・心)を身体(≒声)を通して
劣化することなく出すことのできる 類稀な人です

僕もね 音楽のみ聴いた「昔」ならば
ひとみさんと同じように感じたでしょう

今年もよろしくお願いします^^
by ヒデキヨ (2010-01-06 09:11) 

mouse1948

ヒデキヨさん、明けましておめでとうございます。
お越し下さり、nice!&コメントをありがとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
by mouse1948 (2010-01-06 09:36) 

りゅう

あけましておめでとうございます♪
今年もよろしくお願いいたします。(^_^)
「きく」「みる」、素敵です♪
確かに漢字で書いてしまうと意味が限定的になってしまいますね。
五感で感じ、心で感じる。
それを表現し伝えるにはひらがなの持つ曖昧さや柔らかさ複雑さといった多様性が適しているのかもしれませんね。(^_^)
by りゅう (2010-01-06 21:17) 

アマデウス

新年おめでとうございます!
昨年は大変有益なコメントなどを頂きありがとうございました☆
本年も宜しくお願い致します☆
2010年がヒデキヨさんにとって素晴らしい年となります様祈念
しております☆
by アマデウス (2010-01-07 12:49) 

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