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52階で聴いたグリーグ [コンサートやライヴで感じたこと]

52階のグリーグ①.jpg

「上手」「キレイ」という事柄以外に、僕にとって何か「学び」があったコンサートについては、
ちょっとくらい前のことでも、できるだけ書き留めてゆきたいと思います。

この日は、六本木ヒルズの森タワー52F展望台内で開かれた「スカイイルミネーション2009」の
「MADO LOUNGE SPICE CLASSIC LIVE」へ。

千葉 清加さん(第1ヴァイオリン)
重岡 菜穂子さん(第2ヴァイオリン)
三島沙帆さん(ヴィオラ)
中 実穂さん(チェロ)

といった人たちが、グリーグのカルテット(弦楽四重奏曲)やクリスマス・メドレーなどを披露。
手抜きの一切ない、骨格と技術のしっかりした、それでいて情熱の溢れる演奏でした。

ただ、僕が感じたことがもうひとつありました。それを書きましょう。

♪♪♪

Classical Music Cafeへようこそ。

音楽史をひも解くと、音楽は、食事やおしゃべりとともに供される芸術であることが、ひとつの
目的になり得た時代が一時期ありましたね。

それは、傑作絵画を背にして、美味を食する晩餐と似たような「扱われ方」ともいえましょう。

モーツァルト、ハイドン…他にもいますが…は、仕える、つまり給与を払ってくれる殿様の為に、
いや注文に応じて、そういった「趣き」の音楽を作ることもありました。

この日、ラウンジで行われたコンサートは、そのモーツァルトらが生存していた当時の人々が、

「ああ、こんな環境で、こんな風に、音楽を「わかちあって」いたのだろうか」…という感覚に
陥る、あるいは、ちょっと想像できそうな、そんな経験でした。


スプーンやフォークがお皿にあたる小さな金属音…

給仕人の足音…

お隣の人との気のおけない、しかも絶え間なく続くおしゃべり…

おしゃべりの中身といっても…

注文する男の威勢の良い声や、会社での出来事や趣味のこと…

女の甲高い笑い声…

200年前とちっとも変らないと思った。もっとも、携帯の着信音が鳴るのは現代ならではだけど。

今の「絶対的静寂」が前提の「コンサート」の環境とは大違いだ…とも感じました。

どちらが観賞のあり方として本物か正しいか?

という議論は今回せずとも、ラウンジでくつろぐお客は、アルコールを体に注いでおしゃべりし、
笑う…のは「正しい」と思います。そのためにお金を払っているのですからね。

それからもうひとつ感じたこと。これは「絶対的静寂」の環境では気づかなかっことですが…、


音楽のダイナミクス(強弱幅)に応じて…比例して…おしゃべりの音量も変わったという点です。

音楽が、ffフォルテッシモ(とても強く)弾かれたときは、結構おしゃべりが盛り上げる。一方、
静かな抒情的メロディー部分ではひそひそ話。グリーグのカルテットはその典型的例でした。

なるほど!

だから、モーツァルトやハイドンの…全てではないけれど…音楽には、劇的なフォルテッシモや
ppピアニッシモ(とても弱く)を対比した作品が…特に室内楽では…そんなに多くはないな…と
も感じたのです。

楽器の制約、様々な観点が絡み合うのは承知の上。また、その限りではない作品もありますよ。

でもね、
強弱が平板な音楽の方が、会話の邪魔にならないことを、当時の音楽制作請負人たちは、
ちゃんと心得て、音楽を「調達」して「納品」していたのかもしれませんよ。

フランス革命以降、ベートーヴェンの音楽は、端折って書けば、自分のための表現として音楽を
用いました。トロンボーンによる謳歌したフォルテの響きや、自分の内省をぶつぶつ語る弱音。
小骨が喉に刺さりそうなくらい繰り返される執拗なアクセント…。しゃべる隙を与えないですね。

当夜の演奏から、「クラシック音楽」の受容の仕方、あるいは「扱われ方」の「歴史」が透けて
見えてくる気が、
「ほんの少し」だけしました。

凡庸な演奏なら、「凡庸」なことに耳がいってしまって、今回のようなことは、気づかなかった
と思います。それだけ、彼女らが、真面目に的確に演奏していた…ということでもあるのです。

52階のグリーグ②.jpg

地上に降り立ってみると、ホワイトのキレイなイルミネーション。

もうすぐ、クリスマスですね。

2009年12月4日(金)森タワー52F 展望台内 MADO LOUNGE SPICEにて


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コメント 6

りゅう

お酒が美味しくいただけそうな素敵な演奏会ですね♪
演奏会のコンセプトが明確であればあるほど、お客さんもその意図を汲みやすく、絶対的静寂が前提となるものもラウンジでおしゃべりや物音が伴うものも、正しい鑑賞スタイルになりえるように思います。
「0歳児から~」といったものも同様に。(^_^)
先日、テレビで『プロムス2009 ラスト・ナイト・コンサート』を見ました。
ロックコンサートのようなピカピカ照明で、演奏者もお客さんも皆さんノリノリ、本当に自由に音を楽しんでいるように感じました♪
日本の場合、「クラシックは輸入されたもの」としてつい構えてしまい、鑑賞方法もマニュアル化というか画一化・硬直化しているように思えました。
まだまだ西洋文化に対し受身の姿勢が強いということでしょうか。
真面目すぎる国民性のせいでしょうかね~(/ー\*) イヤン♪
by りゅう (2009-12-23 14:42) 

音楽っ子

ヒデキヨさん、こんばんは。
12月4日と言えば、私は村松崇継さんのピアノコンサートに行っておりました。この文章を読んで思い出したのですが、私が村松さんのコンサートに初めて行った三田市で、「浴衣に袖を通して」とか、何曲かとってもグルーブ感のある曲を演奏されたのです。それらの曲を私はその時初めて聴いたのですが、思わずノリノリで手拍子しそうになりました。ですが周りの方はじっと聴いておられて、こういう時もじっと聴く方がよいのかな~?皆さん手拍子したくならない~?と思ったものです。コンサートホールでのコンサートとは最初から最後まで静かに聴くべき、みたいな堅苦しいものが取り払われてもよいのではないかなと。こんな事を感じたのは私だけかもしれませんが。結局、最後まで静か~に聴きましたよ。心の中でノリノリでした!(笑)

素敵な弦楽四重奏を聴きながらの晩餐もよいですね。グリーグとか演奏されたら、私の場合はおしゃべりよりも演奏の方に集中してしまいそうですが…(笑)

クリスマスのイルミネーションの写真綺麗です!



by 音楽っ子 (2009-12-23 23:18) 

キャシー

メリークリスマス^^
by キャシー (2009-12-24 10:41) 

ヒデキヨ

りゅうさん コメントありがとうございました

>真面目すぎる国民性のせいでしょうかね~(/ー\*) イヤン♪

ここに全てがあるように感じます 良くも悪くも ^^
by ヒデキヨ (2010-01-03 20:48) 

ヒデキヨ

音楽っ子さん コメントありがとうございました

村松さんの場合は 活躍しているフィールドが
ポピュラーより 商業音楽より なのに 彼のコンサートは
ピアノ1台だけですよね  ある意味ストイックです ものすごく…

いずれ ノリノリの作品で手拍子もありますよ
いつか きっと
by ヒデキヨ (2010-01-03 20:51) 

ヒデキヨ

キャシーさん いつもありがとうございます!!!
by ヒデキヨ (2010-01-03 20:51) 

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